家庭菜園を始める方にとって、土作りには欠かせない堆肥についてご説明します。
堆肥とは、植物の健康な成長を促すために土に混ぜる有機資材です。
これに対し、肥料は野菜に直接栄養を与えるやり方です。
堆肥の基本
堆肥は植物の残骸や動物の糞から作られ、土壌を改良するために使われます。
この有機資材を土に加えると、微生物が活性化し、土の質が改善されて水はけや通気性が向上します。
堆肥は即効性の栄養は少ないものの、長期にわたって土壌を豊かにする効果があります。
堆肥の種類
- 植物性堆肥:繊維質が豊富で栄養は少なめですが、土作りには最適です。
- 動物性堆肥:栄養価が高く、場合によっては直接の肥料としても利用できます。
土の性質の変化
堆肥を土に加えると、土の団粒化が促進され、土中の微生物が増えます。
これにより土はより肥沃となり、野菜が必要な栄養をゆっくりと吸収できるようになります。
堆肥が土に与える主な利点は以下の通りです
- 水はけと保水性の向上:気候による水分バランスの変動を緩和します。
- pH値の調整:土壌の酸度を中性に近づけ、野菜の生育を促進します。
- 保肥力の強化:土壌が栄養を保持しやすくなります。
これらの効果により、健康的で育ちやすい土壌環境が整いますね。
石灰資材の重要性と活用法
野菜を育てる際、土の健康は欠かせません。特に土の酸度を調整することは、植物が理想的な環境で成長するために非常に重要です。
さまざまな石灰資材を選び、効果的に使う方法を学びましょう。
石灰資材の効果
- 土の酸度調整
日本のように雨が多い地域では土が酸性になりがちですが、石灰資材はそのpHバランスを整えるのに役立ちます。
雨で流失しやすいカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ性元素を補充するためにも重要です。 - カルシウムの供給
カルシウムは植物の細胞壁を強化し、根の成長を促進するために必要です。石灰資材は豊富なカルシウムを提供し、これらの不足を補います。 - マグネシウムの供給
マグネシウムは光合成を助け、植物の酵素の活動を促進するために重要です。
石灰資材の種類と特性
- 苦土石灰
苦土石灰はカルシウムとマグネシウムを同時に供給しつつ、pHを調整することができます。
特に扱いやすく、植え付けの約10日前に使用すると効果的です。
通常は1平方メートルあたり100グラムを目安に施します。 - 炭酸カルシウム
石灰岩を粉砕したもので、ゆっくりと効果を発揮します。酸性土壌の改善には、施肥後約10日間待ってから種まきや植え付けを行うのが適切です。 - 消石灰
水と反応して発熱する生石灰を加工したもので、強いアルカリ性と速効性を持ちます。
殺菌効果もあるため土壌消毒にも利用できますが、連続使用は土壌をアルカリ性に傾けるため注意が必要です。 - カキ殻
塩分を取り除いて砕いたカキ殻や、高温で焼いたものもあり、1平方メートルあたり200グラムを目安に使用します。 - 貝化石
海底の貝殻が地中で化石化したもので、有機栽培に適していますが、コストが高いのが欠点です。
石灰資材の適切な使用法
土壌のpHバランス調整は、植物が最適な環境で成長するために重要です。石灰資材の使用は植物の種類や土の状態に応じて慎重に行う必要があります。
- 施用タイミング
種まきや苗植えの約2週間前に石灰資材を施すことが推奨されます。
特に強アルカリ性の資材は根を傷める可能性があるため、慎重に取り扱う必要があります。
炭酸カルシウムや苦土石灰は、時間をかけて効果が現れるため、施用は早めに行うのが望ましいです。 - pH調整
植物ごとに異なる好ましいpHがあるため、石灰資材を均一に混ぜて土壌を調整することが大切です。石灰が固まらないよう注意してください。
石灰資材の使い過ぎに注意
石灰資材の過剰な使用は土壌をアルカリ化し、元の状態に戻すのが困難になります。適切な量を守り、必要に応じて土壌酸度計を使用することを推奨します。
主な野菜のPH一覧です
野菜の種類によって好む土壌のpHが異なります。以下に主な野菜とそれぞれの理想的な土壌pHの一覧を表です。
野菜 | 理想的な土壌pH範囲 |
---|---|
トマト | 6.0 – 6.8 |
ナス | 5.5 – 6.5 |
ピーマン | 5.5 – 7.0 |
キュウリ | 5.5 – 7.0 |
ジャガイモ | 4.8 – 6.5 |
ニンジン | 5.5 – 7.0 |
レタス | 6.0 – 7.0 |
ブロッコリー | 6.0 – 7.0 |
カブ | 6.0 – 7.5 |
スイートコーン | 5.8 – 7.0 |
この表は一般的なガイドラインであり、地域や土壌の条件によって最適なpHは多少異なる場合があります。土壌のpHを測定し、必要に応じて調整することが野菜の生育には重要です。
有機質肥料の活用
家庭菜園での有機栽培において、有機質肥料は欠かせない要素です。ここではその利点と活用方法について詳しく解説します。
有機質肥料の基本情報
有機質肥料は、米ぬかや油かすなどの有機物から作られます。これらは堆肥だけでは補いきれない栄養素を提供し、植物の健全な成長を助けます。
元肥としての有機質肥料
- 施用方法
植え付けの2~3週間前に施肥すると、肥料の効果が徐々に現れ始めます。 - 種類と特徴
油かすはチッ素が豊富で、すべての野菜に適しています。米ぬかはマグネシウムや鉄分も含まれ、コストパフォーマンスに優れています。
追肥としての有機質肥料
- 速効性の肥料
発酵油かすや発酵鶏ふんはすぐに効果が表れ、すぐに植え付けが可能です。
発酵鶏ふんは特にリン酸が豊富で、果菜類の生育を助けます。 - ぼかし肥料
油かす、魚かす、米ぬかなどを混ぜて発酵させた肥料で、多くの野菜に適しています。
肥料の適切な使用量について
野菜を栽培する際、肥料の使いすぎは避けるべきです。
過剰な肥料は土から簡単には除去できず、畑の微生物が処理しきれず、野菜に病気や害虫の被害が出ることがあります。
自宅で簡単にできる卵の殻肥料
家庭菜園でコストを抑えながら有効な資源を利用する方法として、卵の殻を使った肥料作りがあります。
このシンプルな方法で、キッチンの残り物から貴重な肥料を作ることができます。
卵の殻を使った肥料の作り方とその効果
- 卵の殻を洗い、薄皮を取り除いた後、乾燥させて粉末にします。
- この肥料はカルシウムが豊富で、植物の細胞膜を強化し、光合成を促進し、根の成長を助けます。
卵の殻肥料の栄養素とその必要性
- 卵の殻は主に炭酸カルシウムで構成されており、カルシウムは植物の成長に不可欠です。
- カルシウム不足は新芽や根の発育障害を引き起こすことがあります。例えば、トマトの尻腐れ症や白菜の芯腐れ症がこれにあたります。
- 卵の殻にはカルシウム以外にも窒素、リン酸、マグネシウムなどが含まれており、これらも植物の健康にいいとされています。
卵の殻を利用した肥料の作り方
卵の殻を使った肥料の作り方は非常に簡単です!
- 使用した卵の殻をよく水洗いします。
- 卵の殻を完全に乾燥させます。
- 乾燥させた卵の殻を細かく砕きます。
卵の殻肥料の活用方法
卵の殻で作った肥料は以下のように土に利用できます。
- 土に直接混ぜ込む。
- 植物の根元に直接撒く。
家庭で簡単にできる生ゴミ堆肥の作り方
重たい堆肥を買って運ぶ代わりに、自宅で簡単に生ゴミから堆肥を作る方法を紹介します。この方法は環境に優しく、経済的です。
- 畑に入れる
- コンポストを使用する
- ダンボールなどを使う
- プランターを使う
などなどで今回は畑でのやり方とプランターでのやり方をお伝えします。
生ゴミ堆肥のメリット
- 生ゴミの削減に役立ちます。
- 環境保護に寄与します。
- 野菜が健康に育ちます。
- 経済的にも節約になります。
堆肥に適した生ゴミ
- 野菜くず(切れ端や種など)
- 果物の残り
- お茶の葉
- コーヒーのかす
- 卵の殻
- 残ったごはんやパン、麺類
堆肥に適さない生ゴミ
- 肉や骨
- 乳製品
- 加工食品
- 多量の油を含むもの
- タケノコやトウモロコシの硬い皮
- 腐ったものやカビが生えた食材
生ゴミ堆肥の作り方(畑を活用)
生ゴミを堆肥にする手順は以下の通りです。
- 堆肥に適した生ゴミを一週間分集めます。
- 畑に生ゴミを入れるための穴を掘ります。
- 穴に生ゴミを入れ、軽く土と混ぜ合わせます。
- 土で覆い、生ゴミを埋めます。
夏は1か月、冬は2~3ヶ月後に確認し、生ゴミが分解されていれば堆肥が完成しています。
生ゴミ堆肥の作成コツ
- 分解されないものは避ける:堆肥にならないもの。
- 分解が遅いものは避ける:時間がかかります。
- 大きなものは小さく切る:小さくすることで分解が速くなります。
- 水分はしっかり切る:余計な水分は腐敗やカビの原因になります。
- 腐ったものは使用しない:悪臭や虫が発生する原因になります。
生ゴミ堆肥の設置場所の選び方
生ゴミを堆肥化する場所は、作物が植えられていない空き地が理想的です。
広い庭や畑を持っている人は場所を選ぶ際に困ることは少ないでしょう。
しかし、市民農園や共有畑を利用している場合は、使用できるスペースが限られているため、畑の隅や畝間の通路に堆肥化場所を設けるのが良い方法です。
ただし、ナスなど根が広範囲に広がる植物の近くでは、根を傷める可能性があるため注意が必要です。また、共有スペースや他人の畑に生ゴミを埋めるのは避けましょう。
堆肥化にかかる時間
堆肥化の期間は気温によって異なります。暖かい時期には微生物が活発に活動し、約1ヶ月で堆肥化が進みます。
対照的に、冷たい冬場では2~3ヶ月かかることが一般的です。
生ゴミ堆肥の作り方(コンポストを使用する)
- 1設置場所と設置方法
コンポスト容器は、なるべく日当たり、水はけ、風通しのよい場所を選びましょう!
ほぼ毎日使うものですから、台所に近い場所を考慮しましょう。それとコンポストの下は深く掘っておけば生ごみが沢山入りますよ~。
- 2生ごみを入れる前の下準備は
できれば容器の底に枯れ葉、枯れ草、ワラくず、米ぬかなどを混ぜて20㎝程度敷き床を作ります。
こうしておくと生ゴミの発酵分解が促進されます。コンポスト容器の1/3程度入れる方もいます。 - 3生ごみの発酵と減量
地中の微生物の働きで毎日入れた生ごみは発酵分解が進んでどんどん入れても減量しています。
こんな状態の時に併せてコンポスト容器の廻りの乾いた土をスコップ1杯程度入れてかぶせてください。
時々スコップで攪拌もしてみてください。
- 4堆肥として使うには
一杯になればコンポスト容器を外して、上の部分はまだ発酵していない生ごみがあると思うので、これは外した空のコンポストに再投入という事で移し替えてください。
堆肥化した生ごみはナイロンなどの袋で被せて半年か10ヶ月かけて月に1~2回位い堆肥を積み替えて十分完熟させてください。
コンポスト容器で生ごみをつくるポイントは?
- 置き場所について:コンポストを風通しの良い、日の当たる場所に設置し、常に乾燥を保つようにしてください。これは、湿度が高すぎると土壌が腐敗しやすくなるためです。
- 生ごみの水分管理:生ごみには約80%の水分が含まれているため、適切な発酵のためには水分を適度に減らすことが重要です。
ごみを投入する前に、台所の隅で一晩水を切ることが推奨されます。適切な水分含有率は約60%(握った時に手が湿る程度)です。 - 容器の管理:コンポストの容器は定期的に空気が通るようにし、適宜蓋を開けて日光と風を取り入れることが望ましいです。
また、虫の侵入を防ぐために、入口にはネットをかけることが効果的です。 - 完熟堆肥の判断:完熟堆肥は黒茶色に変わり、生ごみの痕跡は見られず、臭いもありません。
ミミズなどの生物が活発に動いている場合、堆肥は良好な状態です。しかし、強いアンモニア臭や腐敗臭がする場合は、まだ成熟していない可能性があります。 - 悪臭の防止:発酵過程で炭素源が不足すると、悪臭の原因となるアンモニアが生成されることがあります。
枯れ葉や段ボールなど炭素を豊富に含む材料を加えることで、これを防ぎます。 - 虫対策:コンポストの湿度を適切に管理し、乾燥材を定期的に加えることで虫の発生を抑えることができます。
また、少量の石灰を加えると虫を寄せ付けにくくなります。 - スイカやメロンの皮の処理:これらは小さく切ることで、発酵が促進されます。柑橘類の皮や玉ねぎの皮は発酵が遅いため、注意が必要です。
- 魚の内臓の処理:臭いや虫の発生を抑えるために、米ぬかをまぶしてから投入します。
- 生ごみ投入後の処理:生ごみを入れた後は、乾燥した土を加え、しっかりとかき混ぜて空気を混ぜ込むことが重要です。
野菜くず(残渣)
家庭菜園を始めたばかりの方々にとって、専門用語が理解しにくいこともあるでしょう。ここでは、家庭菜園でよく使用される「残渣(ざんさ)」という意味を解説します。
残渣(ざんさ)の定義
残渣は、野菜の栽培過程で発生する食べられない部分を指しますが、チョット難しい語源かな~と感じています。
こういった言葉の定義もあるので一応頭の隅にでも置いておいてください。
これには野菜の茎や葉、虫や病気の影響を受けた部分、販売や消費に適さない形状の野菜などが含まれます。
例えば、トマトの茎や葉、キャベツの外葉、病気によって処分される野菜などがあり、これらは一般に「野菜くず」とも呼ばれます。
野菜くず(残渣)の処理方法
野菜くずは畑で出た余分な植物の部分であって、これを適切に片づけるには二つあります。
一つは一般のゴミとして処分する方法、もう一つは堆肥として再利用する方法です。
- ゴミとして処分する方法
・ベランダや市民農園で栽培した際に出た余分な植物部分を燃えるゴミとして処分します。
・特に市民農園や貸し畑では適切な廃棄設備がない場合が多いので、自宅に持ち帰って燃えるゴミとして処理することもあります。 - 堆肥として利用する方法
・家畜のふんや落ち葉と同じように、野菜くずも微生物の作用で分解・発酵させ、堆肥として利用します。
・畑に余裕があれば、そこに穴を掘って埋めることで、数ヶ月後には堆肥が完成します。
・コンポスト容器に入れて堆肥として利用します。
家庭菜園の手引き
以下の関連記事も併せてご覧ください。
水やり>>>
種まきの基本>>>
畝の作り方>>>
雑草対策>>>
まとめ
- 家庭菜園での堆肥の利用は、土壌の質を向上させ、植物の健康な成長を促進する方法です。
- 堆肥は生ごみや庭の剪定くずなどの有機物を再利用して作ることができます。
- これらの有機物を積み重ね、発酵させることで堆肥が完成し、土に混ぜ込むことにより、土の水はけと保水性が改善されます。
- 初心者は小規模なコンポストから始めて、堆肥が完熟するまで定期的にかき混ぜることが重要です。
- これにより、土壌が豊かになり、植物や野菜に必要な栄養を自然な形で供給できます。