大根の収穫は「種まきから50~60日」が目安で、根の太さが直径7cm、肩が地上に15cmほど出て、外葉が垂れてきた頃がベストタイミングです。
収穫の見極めを誤ると、「す」が入ってスカスカになったり、根割れやトウ立ちが起きてしまうこともあります。
この記事では、大根の収穫時期を正確に見極めるポイント、効率的な収穫手順、そして収穫タイミングを逃したときのリスクまで、農家レベルで分かりやすく解説します。
これを読めば、「今、抜いていいのかな?」と迷うことがなくなりますよ。
大根の収穫見極めポイント5つ
大根の収穫見極めポイント5つについて解説します。
それぞれの見極め方を、わかりやすく解説します。
① 種まきからの日数を確認する
大根の収穫は、まず「日数の目安」から判断するのが基本です。一般的な品種であれば、種まきからおおよそ50〜60日が収穫のタイミングです。
春まきなら6月〜7月、秋まきなら10月〜12月が収穫期の目安です。大根の根が肥大し始めるのは、まさにこの時期なんですね。
カレンダーや栽培記録をつけておくと、あとから「今ちょうど収穫期だな」と判断しやすくなります。
気温や天候によって生育が早まることもあるので、日数だけでなく他のサインもあわせて確認するのが確実です。
この「50〜60日」というのは、経験的にも信頼できる数字。覚えておくと便利ですよ。
② 根の太さをチェックする
次のポイントは、根の太さです。地上に出ている大根の首部分の直径が約7cmになったら、まさに収穫適期です。
この7cmというのは、ミニ大根から青首大根まで、ほとんどの品種に共通する目安です。
太さが十分でない場合は、もう少し成長を待つと甘みも増します。逆に太くなりすぎると、内部がスカスカになる「す入り」が始まることもあります。
触ってみてハリがあり、しっかりとした感触があるときがベストタイミングです。
見た目よりも感触を重視すると、失敗が少なくなります。
③ 地上に出ている肩の高さを見る
大根の「肩」が地上にどれくらい出ているかも重要なサインです。
一般的に、地面から15cmほど顔を出してきたら、もう収穫OKです。
成長が進むと肩の部分が緑がかってきますが、これは日光に当たった証拠であり、品質には問題ありません。
肩が大きく盛り上がってきたら、根の下部も十分に太っていることが多いです。
肩の色と高さ、両方を目で確認してみてくださいね。
④ 外葉の垂れ下がり具合を観察する
外葉がピンと立っていた大根が、だんだんと横に広がるように垂れてきたら、それは「熟した」サインです。
葉が地面に触れるくらい垂れ下がっていると、根がしっかり太って栄養が蓄えられています。
また、中心の葉が少し開いてきたころも収穫適期の目安です。
葉の色が薄くなってきたり、勢いが落ちてきたら、まさに抜きどきです。
葉の状態を毎日少しずつ観察するのがコツです。
⑤ 試し掘りで実際の太さを確認する
見た目で判断しにくいときは、「試し掘り」が一番確実です。
土を軽く掘って、根の太さや充実度を直接確認してみましょう。
まだ細ければもう少し待ち、十分太っていれば全体を収穫します。
一度抜いたものは再び植えても成長しないため、確認用に1本だけ掘るのがポイントです。
この方法を使えば、失敗のない収穫タイミングがつかめます。
大根を上手に収穫する手順3ステップ
大根を上手に収穫する手順3ステップについて解説します。
それでは順番に見ていきましょう。
① 葉の付け根をしっかりつかむ
大根を抜くときは、まず葉の付け根をしっかり握ることから始めます。
大根の根は思っているよりも地中深くまで伸びています。葉の先を持って引っ張ると途中でちぎれたり、根が折れることがあるので注意しましょう。
葉と根の境目あたり、つまり「クラウン」と呼ばれる部分を両手でしっかり持つのがコツです。
複数本収穫する場合は、手を保護するために軍手を着用しておくと安全で作業もスムーズに進みます。
しっかり握ることで、力を均等にかけられ、真っ直ぐ引き抜きやすくなりますよ。
② 土をほぐしながら真上に引き抜く
大根はまっすぐ引き抜くのが基本ですが、固い土だと抜けにくいこともあります。
そんな時は、株元を軽く前後左右にゆらしながら、周囲の土を少しずつほぐしていきましょう。
特に乾燥した畑や粘土質の土では、無理に力を加えると根が途中で折れてしまう原因になります。
もし土が固いときは、スコップや棒を使って根の周囲をほぐすとより安全です。練馬大根などの長根種では、この「土ほぐし」が必須です。
抜くときは「真上にゆっくり」。これが一番のコツです。
③ 根を折らずに丁寧に扱う
無事に引き抜けたら、次は扱い方です。収穫直後の大根は見た目以上にデリケートです。
根を地面に強く叩きつけたり、無造作に積み重ねると、表面に傷がついて日持ちが悪くなってしまいます。
抜いたらすぐに葉を根元からカットしておくと、根に栄養が戻らず、品質が保たれます。
この作業を畑の中でやっておくと、後の処理が格段に楽になります。
収穫した大根は、日光が当たらない場所に一時保管しておくと鮮度が落ちにくいですよ。
収穫が遅れたときに起こる3つのリスク
収穫が遅れたときに起こる3つのリスクについて解説します。
大根は、収穫のタイミングを逃すと一気に品質が落ちてしまいます。それぞれの症状を詳しく見ていきましょう。
① 大根内部がスカスカになる「す入り」
「す入り」は、大根の内部がスポンジのようにスカスカになってしまう現象です。外側からではわかりにくいのですが、切ってみると断面に隙間ができているのが特徴です。
この状態になる原因は、細胞が老化して水分が抜けること。つまり「成熟を通り越してしまった」サインです。
特に春大根や夏大根は高温期に栽培されるため、「す入り」が起きやすい傾向にあります。
収穫が遅れるほど発生率が高くなり、味もパサついて甘みがなくなってしまうため、早めの判断が大切です。
日数や根の太さのサインを見逃さないことが、す入りを防ぐ最大のポイントです。
② 根が裂けてしまう「根割れ」
根割れ(裂根)は、地上部の大根の表面が縦にパックリと裂けてしまう現象です。見た目の問題だけでなく、水分が抜けて食感も悪くなります。
主な原因は、水分バランスの急激な変化です。例えば、乾燥が続いたあとに急に大雨が降ると、根の内部に一気に水が吸収され、膨張して割れてしまいます。
また、株間を広く取りすぎて成長が早まりすぎると、根が肥大して皮が耐えきれなくなり、同様に割れやすくなります。
土の水分を一定に保つことが予防のコツで、マルチング(土の表面を覆う)を行うと割れ防止に効果的です。
もし割れてしまった場合でも、すぐに収穫すれば食べることは可能です。調理にはすぐ使うようにしましょう。
③ 花芽が出る「トウ立ち」
「トウ立ち」とは、大根の中央から花芽(つぼみ)が伸びてくる現象のことです。主に気温が低下する時期に起きやすく、春先や晩秋の栽培で見られます。
この状態になると、大根は栄養成長(根や葉を育てる段階)から生殖成長(花や種を作る段階)に移行します。
その結果、根の栄養が花や茎に奪われてしまい、味が一気に落ちてしまいます。特に甘みが抜けてスジっぽくなるのが特徴です。
トウ立ちのサインは、中心から細長い茎が伸び始めたとき。もし見つけたら、根の太さが十分でなくてもすぐに収穫してください。
一度トウ立ちしてしまうと味は戻らないため、「見つけたら即収穫」が鉄則です。
収穫が早すぎるとどうなる?味と形の劣化ポイント
収穫が早すぎるとどうなる?味と形の劣化ポイントについて解説します。
大根は「早めに抜いたほうが安全」と思われがちですが、早すぎる収穫も実は大きなリスクがあります。それぞれ見ていきましょう。
① 味がのらず辛みが強くなる
大根は、根にデンプンや糖分をしっかり蓄えることで甘みと旨みが出てきます。
しかし、収穫を早めてしまうとこの熟成が不十分で、辛み成分(イソチオシアネート)が強く残った状態になります。
つまり、「辛いけど甘くない大根」になってしまうのです。
特に秋大根は、昼夜の寒暖差で糖分が増えるため、十分に時間をかけたほうが味がのります。
まだ細い段階で抜くと、本来の美味しさを味わえません。見た目だけで判断せず、太さや葉の状態を確認してからにしましょう。
② サイズが小さく収量が落ちる
大根を早く抜くと、当然ながら根の太さも長さも不十分です。
根が細いままだと重さが足りず、1本あたりの収量も大きく下がります。
例えば、標準サイズ(青首大根)であれば直径7cm、長さ30cm前後が収穫の目安ですが、早すぎるとこの半分にも満たないことがあります。
根の成長は、最後の10日間で一気に進むと言われており、あと少し待つだけで収穫量が大きく変わるのです。
焦らず、自然のペースに任せることが、美味しくて立派な大根を得る秘訣です。
③ 食感が硬くなる
早採りの大根は、まだ細胞組織が硬く、水分量も少ない状態です。
そのため、包丁を入れたときの「シャキッ」とした瑞々しさがなく、筋っぽく感じることがあります。
特に煮物にしたとき、味が染みにくく、火を通しても中が硬いままという失敗につながります。
逆に適期で収穫した大根は、細胞が柔らかく水分をたっぷり含んでいるため、煮ても焼いてもトロッとした甘みが出るのが特徴です。
つまり、食感の良さを引き出すには「早すぎず、遅すぎず」が大切なんですね。
収穫後に鮮度を保つ保存方法2パターン
収穫後に鮮度を保つ保存方法2パターンについて解説します。
収穫した大根はそのまま放置すると、すぐに水分が抜けてしなびてしまいます。鮮度を長持ちさせるには、収穫後の処理と保存方法がとても重要です。
① 短期保存:新聞紙で包み冷暗所に
収穫してから数日〜1週間程度で食べ切るなら、新聞紙に包む「短期保存」で十分です。
まず、葉を根元から切り落としましょう。葉をつけたままだと、葉が根の水分と養分を吸い上げてしまい、どんどん鮮度が落ちていきます。
切り落とした後は、根と葉をそれぞれ別々に新聞紙で包みます。大根は湿気を嫌うので、ビニール袋には直接入れず、新聞紙で軽く包むのがポイントです。
保存場所は、冷暗所または冷蔵庫の野菜室がおすすめです。冬場なら室内の涼しい場所でも大丈夫です。
目安としては、5〜7日ほどはみずみずしさをキープできます。
| 保存方法 | 手順 | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| 新聞紙+冷暗所 | 葉をカットし、新聞紙で包む | 約5〜7日 |
| 新聞紙+冷蔵庫野菜室 | 根と葉を別に包んで保存 | 約1週間 |
新聞紙が湿ってきたら交換すると、カビ防止にもなります。
② 長期保存:土中に埋めて保存する
大量に収穫した場合や、冬の間も長く楽しみたいときには「土中保存」がおすすめです。
この方法では、収穫した大根を土に戻して保存することで、乾燥を防ぎながら自然の保湿効果で鮮度を保ちます。
まず、葉を根元から完全に切り落とします。その後、深さ30〜50cmほどの穴を掘り、そこに大根を横向きに並べて置きます。重ならないように並べるのがポイントです。
並べた大根の上に土をしっかりかぶせれば完了です。冬場なら半年近く保存できます。
ただし、味は時間とともに少しずつ落ちていくので、2〜3ヶ月以内に食べるのが理想的です。
| 保存方法 | 手順 | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| 土中保存 | 葉を切って横向きに埋め、土をかぶせる | 約3〜6ヶ月 |
気温が高い地域では、虫害や腐敗を防ぐために、涼しい北側の軒下などを選ぶと安心です。
まとめ|大根の収穫見極めを覚えて最高の食味を手に入れよう
大根の収穫タイミングを見極めるには、日数だけでなく、根の太さや葉の状態といった複数のサインを組み合わせて判断するのが一番確実です。
おおよその目安は、種まきから50〜60日。根の直径が7cm、肩が15cmほど地上に出て、外葉が垂れてきたら収穫適期です。
早すぎると味がのらず辛みが強く、遅すぎると「す入り」や「根割れ」「トウ立ち」などの問題が起きてしまいます。
また、収穫後はすぐに葉を切り落とし、新聞紙に包んで冷暗所で保存すると鮮度を保てます。長期保存したい場合は、土中に埋めておく方法も効果的です。
正しい見極め方を覚えておけば、みずみずしく甘い大根を自分の手で収穫できます。タイミングを見逃さず、最高の一本を手に入れてくださいね。
